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みる鼻・きく鼻(小倉南区・平和台)

イラスト/田中時彦さん(北九州市出身)
童画家。1979年少年マガジンSPで漫画家デビュー。新聞・雑誌に童画やイラストを多数発表、各地で原画展を開催。北九州市立子育て支援プラザ、北九州空港などに作品展示。戸畑図書館絵本作り教室ほか、講師としても活躍中。 http://www.aa.alpha-net.ne.jp/timebox/

むかしむかしの正月のこと、平尾台に住む2匹の鬼「みる鼻」「きく鼻」が、英彦山(ひこさん)に住む鬼の親分に何を持っていってお祝いをしようかと相談していました。
平尾台名物の針の岩(※1)の刀か、羊の石(※2)の置き物かといろいろ考えた末、人間の子を持っていくことに。英彦山の大鬼は、子どもを自分の家来に育て上げ、勢力を広めていたからです。人間の子でも長い間、鬼と一緒に暮らしていると、いつのまにか鬼になってしまうのです。
2匹の鬼は龍ガ鼻から吹上峠を、里の辻へ下りてきました。里では突然、鬼が現れたので大騒ぎ。みんな驚きに震えながら村中を逃げ回りましたが、子どもが1人さらわれてしまいました。
そしてあくる日のこと。「みる鼻…何かにおいがせんか」「うん。うまそうなにおいが、里からしてくる。何じゃろう。行ってみるか」。2匹の鬼は、においの正体を見つけようと、また里へ下りてきました。その様子を見張っていた里の1人が、お寺の鐘をガンガンたたき、里の人々はそれを合図に、自分の家の門口(かどぐち)にくさったイワシの頭をつるし始めました。鼻や目がきく鬼たちは、目がくらみ、声がかれてしまい、慌ててすみかに帰りました。

ところが次の日、人間にこらしめられた鬼たちは、今度は大きな鼻の穴にせんをして、また、里に下りてきて大暴れ! 困った村人たちは、鬼退治の相談をしました。
 さて、その翌日の夜のこと、2匹の鬼は鼻にせんをして、また里におりてきました。里はシーンとして静かでした。鬼どもは不思議に思って、そろそろと里の広場までやってきてました。見ると、火があかあかと燃えています。「やっ、ここにいたか。うわーっ!」鬼どもは、火の回りの人間をめざして躍り込みました。

そのときです。パン!…パチ、パチ…パパン!…パパン!パチ、パチ…と、大きな火の粉があたり一面にふりかかり、ものすごい竹のはじける音がしました。
 鬼どもはびっくりして、一目散に山のすみかへと帰っていきました。その間に、さらわれていた子どもは、里の人の手で助け出されました。竹の音にこりた鬼どもは、二度と平尾台から里には下りてこなくなったということです。
 ※1 鍾乳洞の中につららのように垂れ下がっている岩 ※2 羊の形をした石灰石

「北九州の民話」読み語り

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小倉南区に拠点をもつ「劇団 響座」の協力により、北九州の民話の読み語りを動画でご覧頂けます。  語り手は、小倉南区に拠点をもつ「劇団 響座」のメンバー。朗読や語り物、音楽性をもった演劇の実験公演を行っています。同劇団は平成4年に設立。同11年からは劇団の1階倉庫を自ら改造して、農家の囲炉裏部屋を作り、「囲炉裏寄席」と銘打って、民話の一人語りや群読、狂言風笑劇などを、地域の人たちに無料で楽しんでもらっています。
今回の第2話の語り手は、小倉北区在住の劇団員・山咲くみこさんです。北九州弁やアドリブを交えながらの熱演は必見です!

参考文献「北九州むかしばなし」

このシリーズを始めるにあたって参考にしたのは、北九州市が発行する民話と伝説マップ「北九州むかしばなし」。 北九州市内の地域に伝わる民話42話を、ゆかりの場所の地図と合わせて紹介しています。A4版変型、87P、頒布価格1000円。ブックセンタークエストなどで取り扱い。詳細の問い合わせは、(財)北九州市芸術文化振興財団(問093・662・3012)へ。