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蛇の枕石(小倉北区)

書画/宇佐美志都さん(小倉北区在住)
書家。1977年小倉生まれ。経済産業省・(社)日本木造住宅産業協会などの表紙揮毫や文字の成り立ちと日本の慣習における執筆連載を務める。NPO法人文字文化研究所(京都)認定講師。明治29年創業、しょうゆ、ポン酢などを扱う「宇佐美本店」四代目。http://www.shizuusami.com/

まだこの世を神さまが治めておられた頃のこと、現在の小倉北区篠崎八幡神社付近を流れる紫川に、蛇渕(へびがぶち)と呼ばれるところがありました。
この蛇渕には、いつの頃からか大蛇が住みつき、次から次へと村人の体に巻き付いてはけがをさせたり、命からがらの目に合わせたりしていました。村人は困り果て、集まっては「どうしたものかのう。これでは夜もおちおち寝ておられんわ。あの大蛇をおとなしくさせる方法はないものかのう」と嘆いていました。
ある日、また村人たちが集まって嘆いていると、どこからともなく、「社をまつれば、きっと皆の悩みは消えるであろう」という声が聞こえてきました。そこで早速、村人たちは社をたててまつりました。ある日、渕の上に紫の雲がたなびき、それ以来ぷっつりと大蛇はおとなしくなり、村人たちは安心して暮らせるようになったということです(※1)。でも、いかに蛇とはいえ、年頃になると人恋しくてなりません。来る日も来る日も独りぼっちで、ため息ばかりついておりました。
ある日大蛇は、あまり蛇渕に引っ込んでいるから気が紛れないのだと思い、川下の方へ遠出してみることにしました。ポカポカと暖かく、気持ちの良い日に川を下っておりますと、貴船渕のあたりで美しい女蛇に出会いました。大蛇は、雷に打たれたようになって、すっかり恋におちてしまいました。そうなると、今までの独りぼっちの生活が余計に寂しくてなりません。毎日毎日どんなに風が吹こうが、雨が降ろうが、女蛇のところへ会いに行きます。女蛇の方も、大蛇をすっかり好きになり、とても仲良く過ごしておりました。

「北九州の民話」読み語り

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小倉南区に拠点をもつ「劇団 響座」の協力により、北九州の民話の読み語りを動画でご覧頂けます。  語り手は、小倉南区に拠点をもつ「劇団 響座『朗読家集団 読房(どくぼう)』」のメンバー。朗読や語り物、音楽性をもった演劇の実験公演を行ったり、劇団の1階倉庫を改造して囲炉裏部屋を作り、民話の一人語りや群読、狂言風笑劇などを地域の人たちに無料で楽しんでもらったりといった、地域密着の活動をしています。同劇団代表・りゅう雅登さんは、岩手県の「遠野物語研究会」会員で、現在、リビング北九州で開催中の「あなたを語り部に~民話を読む6回講座」の講師でもあります。
そして今回、第4話の語り手は、遠賀町在住の劇団員・浅久野弥生さんです。方言も取り入れた、味わい深い民話の語りを楽しんでください!

参考文献「北九州むかしばなし」

このシリーズを始めるにあたって参考にしたのは、北九州市が発行する民話と伝説マップ「北九州むかしばなし」。 北九州市内の地域に伝わる民話42話を、ゆかりの場所の地図と合わせて紹介しています。A4版変型、87P、頒布価格1000円。ブックセンタークエストなどで取り扱い。詳細の問い合わせは、(財)北九州市芸術文化振興財団(問093・662・3012)へ。