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カッパ地蔵(若松区)

イラスト/オオクラテツヒロさん(若松出身、東京在住)
1967年生まれ。グラフィックデザインを軸に映像やイベントの仕組みづくりを展開。2000年からアートユニット「箱式」(http://hakoshiki.jp/)として、各都市の幼稚園、動物園、美術館などで子どもたちとのコラボを続ける。現在はCGアニメ「グリンの冒険」総監督など、デザインの枠にとらわれない活動を行う。

むかし、若松の修多羅(すたら)や島郷のあたりには、いろんな親分を中心とするカッパたちが群れをなして住んでいました。
 カッパの世界にもなわばり争いが絶え間なく続いており、そのたびにいつも困るのは、田畑や作物を荒らされる人間たちでした。

人々はどうすることもできず、カッパたちの戦争が始まると、ただ空を見上げて嘆くばかりでした。

ある年のことでした。
 ひとしずくの雨も降らず、照り続く毎日に水を失ったカッパたちは、高塔山にある池の水を奪おうと、空中で戦いを始めました。

朝になると、お百姓さんたちが一生懸命に作った田畑の中に、くさくて青い液体がいっぱい流れていました。これは、戦いに負けて死んだカッパのとけたものでした。
 そのため田畑は、それこそ全部荒らされ、作物は枯れてしまい、お百姓さんたちはほとほと困り果ててしまいました。

そうした様子を見ていた山伏の堂丸総学(どうまるそうがく)は、カッパ退治を考えました。
 総学はまず、村の鍛冶屋・かんべえのところに行って、1尺(約33cm)あまりの大釘を作ってもらうよう、頼みました。そしてその足で高塔山に登り、石地蔵の前で、毎日毎夜、カッパを閉じこめるお祈りを続けました。
 このありさまに驚いたカッパたちは、何とかしてお祈りのじゃまをする方法はないものかと知恵をしぼりましたが、これといって別によい方法はありません。

総学の周りでカッパ踊りを踊ってみたり、美しい娘に化けてだましたりしようとしますが、総学は祈り続けます。お金に化けても、お祈りをやめませんでした。
 そんな苦しいお祈りの何日かが過ぎ去った、ある日のこと。総学の気合いの入ったお祈りによって、とうとうカッパたちは、地蔵の中に閉じこめられてしまいました。

そこですばやく、総学は1尺あまりの大釘を、地蔵の背中に深く深く打ち込み、二度とカッパたちがこの世に出られないようにと、固く閉じこめてしまいました。
 村人たちは山伏・堂丸総学のおかげで、その後幸せに暮らしましたとさ。

「北九州の民話」読み語り

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小倉南区に拠点をもつ「劇団 響座」の協力により、北九州の民話の読み語りを動画でご覧頂けます。 語り手は、小倉南区に拠点をもつ「劇団 響座『朗読家集団 読房(どくぼう)』」のメンバー。朗読や語り物、音楽性をもった演劇の実験公演を行ったり、劇団の1階倉庫を改造して囲炉裏部屋を作り、民話の一人語りや群読、狂言風笑劇などを、地域の人たちに無料で楽しんでもらったりといった、地域密着の活動をしています。また同劇団代表・りゅう雅登さんは、岩手県の「遠野物語研究会」会員でもあります。
今回の語り手は、同劇団の梅谷清美さん(下関市在住)です。方言も取り入れ、アレンジされた味わい深い民話の語りを楽しんでください。

参考文献「北九州むかしばなし」

このシリーズを始めるにあたって参考にしたのは、北九州市が発行する民話と伝説マップ「北九州むかしばなし」。 北九州市内の地域に伝わる民話42話を、ゆかりの場所の地図と合わせて紹介しています。A4版変型、87P、頒布価格1000円。ブックセンタークエストなどで取り扱い。詳細の問い合わせは、(財)北九州市芸術文化振興財団(問093・662・3012)へ。