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亀の甲岩(若松区)

イラスト/Yasu Naoさん(北九州市出身/福岡市在住)
1978年生まれ。イラストレーター、グラフィック・デザイナーとして活動中。日常で、ちょっと気分転換になるような作品を目指す。来年2月、JR小倉駅近くのカフェ「APRICOT cafe」で展示会を開催予定。 http://www.geocities.jp/yasunaoyasu

若松や戸畑、八幡がまだ筑前の国と呼ばれていた頃のこと、海辺に近い村に、村人からたいへん尊敬され、頼られている庄屋さまがおりました。  庄屋さまは、しずえという娘と、父娘二人で暮らしておりました。心のやさしい娘で、また庄屋さまに似て、人の役に立つことならば骨身を惜しまずに協力しました。庄屋さまは、それが何よりもうれしく、自慢でした。
庄屋さまはよく一人で海辺を散歩し、大きなそそり立つ岩に座って、疲れを癒していました。ある日、いつものように岩に座り、しずえのことを考え始めました。「しずえもそろそろ年頃じゃ。良い婿を…」などとぼんやり考えていました。考えながらも、生あくびをしたり首筋を何度も軽くたたいたりしていました。このところ、村にいろいろと心配事があり、庄屋さまも疲れていたのです。
庄屋さまはよく一人で海辺を散歩し、大きなそそり立つ岩に座って、疲れを癒していました。ある日、いつものように岩に座り、しずえのことを考え始めました。「しずえもそろそろ年頃じゃ。良い婿を…」などとぼんやり考えていました。考えながらも、生あくびをしたり首筋を何度も軽くたたいたりしていました。このところ、村にいろいろと心配事があり、庄屋さまも疲れていたのです。
少し肌寒くなったので帰ろうかと立ち上がった瞬間、目の前が真っ暗になり、しずえの顔が浮かんで見えたのが最後、庄屋さまはそのまま息をひきとってしまいました。村人たちもたいへん悲しみましたが、それにも増してしずえの悲しみはとても深いものでした。

ある日しずえは、父が好んで散歩していた浜を歩いていると、子どもたちが小さな亀を棒で突いたりたたいたりしているのに出会いました。「そんなことをしてはかわいそうですよ」としずえは小亀をひきとると、生前父が座っていた岩の所からそっと海にはなしてあげました。
それから数日経って、しずえが海辺に散歩に来ると、岩陰からしずえを呼ぶ声がします。何かしらと見ると、大きな亀が二匹。「私たちは、しずえさんが助けてくれた小亀の親です。お礼になんでもいたしますのでどうぞおっしゃってください」といいます。
しずえは「ここは険しい岩ばかりなので、人が安心して座れる岩があれば良いのにと思います」とお願いしました。親亀はうなずくと、姿を消しました。
それから親亀は、先祖の亀や、亡くなった亀の甲羅を何百何千と集めてきて、この険しい岩を埋めてしまいました。畳が千畳も敷ける広さになり、村人たちは安心して岩に座ることができるようになったということです。

「北九州の民話」読み語り

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語り手は、小倉南区に拠点をもつ「劇団 響座『朗読家集団 読房(どくぼう)』」のメンバー。朗読や語り物、音楽性をもった演劇の実験公演を行ったり、劇団の1階倉庫を改造して囲炉裏部屋を作り、民話の一人語りや群読、狂言風笑劇などを、地域の人たちに無料で楽しんでもらったりといった、地域密着の活動をしています。
今回の語り手は、小倉北区在住の劇団員・坂本ひろみさんです。方言も取り入れた、味わい深い民話の語りを楽しんで!

参考文献「北九州むかしばなし」

このシリーズを始めるにあたって参考にしたのは、北九州市が発行する民話と伝説マップ「北九州むかしばなし」。 北九州市内の地域に伝わる民話42話を、ゆかりの場所の地図と合わせて紹介しています。A4版変型、87P、頒布価格1000円。ブックセンタークエストなどで取り扱い。詳細の問い合わせは、(財)北九州市芸術文化振興財団(問093・662・3012)へ。