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せっぷん(門司区)

挿し絵/仁美~satomi~(中間市出身)
1975年生まれ。画工作家。デジタル画をはじめ、似顔絵、ウェルカムボード、イベントや画工教室、ライブペイントなど、北九州市を中心に熊本市河原町などで「万福画工雑貨 仁屋」(http://jinya.ciao.jp)として活動中。

昔、城下町は京町に備前屋という飛脚問屋があり、源さんという飛脚がおりました。赤坂、馬寄、田の浦と手紙を届けた帰り、いつもの通り大里村は柳の御所の茶店で一休みしていると、「こりゃ、しまった。畑の玉泉寺(ぎょくせんじ)に手紙を届けるのを忘れておった」と、わらじの緒を締め直し始めました。
これを聞いていたおばあさんは、「今から玉泉寺へ行くって、日が暮れるよ。やめた方がいい。このごろ、鹿喰峠(かじきとうげ)に鬼が出るといううわさ。恐ろしい。明日にした方がいいよ、源さん」と、呼び止めましたが、責任感が強い源さんは、峠を登り始めました。
峠を登りつめたところに鬼が現れました。鬼は、英彦山へ帰るための修行中。最後の仕上げは、人間を食べることでした。それ聞いた源さんは、「それなら仕方がない。どうせない命ならあきらめよう。そのかわりこの世の思い出に願い事を聞いてくれ。何でも、鬼さんは神通力があるとか。その神通力で英彦山ガラガラという鈴に化けてみてくれ」。「なんのなんの、簡単なこと」。「ほほう、これはお見事。これが英彦山ガラガラか」。何を思ったのか、源さんはその英彦山ガラガラを口の中へ放り込み、ぐいっと飲み込みました。

鬼は「こらっ、約束が違うぞ」と、源さんのお腹の中で大暴れ。源さんは、飛ぶようにして玉泉寺へたどり着き、寺の和尚さんに訳を話します。和尚さんは、これを聞くとにやり。大豆を取り出しいろりにかけて、がらがら炒り始めました。「和尚さん、豆炒りは私が手伝うから、何か薬をください」。「よしよし、この大豆が大の良薬じゃ。いっぱい食べろ」。源さんは、言われた通りに炒り豆をぽりぽり。さぁ、鬼は大変。一番大嫌いな炒り豆が頭からばらばら。こりゃたまらんと大暴れ。源さんのお腹はますます膨れます。和尚さんが「かまわん、かまわん、ぶっぱなせ」。とたんに源さんのお尻から大きな音。「セップーン?」。源さんのお尻の下敷きになった鬼はぺちゃんこ。  以来、この地方では2月4日のことを“セップーン”(節分)というようになったということです。

「北九州の民話」読み語り

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語り手
鈴木康弘さん

語り手は、小倉南区に拠点をもつ「劇団 響座『朗読家集団 読房(どくぼう)』」のメンバー。同劇団(代表:りゅう雅登さん)は朗読や語り物、音楽性をもった演劇の実験公演を行ったり、劇団の1階倉庫を改造して囲炉裏部屋を作り、民話の一人語りや群読、狂言風笑劇などを、地域の人たちに無料で楽しんでもらったりといった、地域密着の活動をしています。
今回の語り手は、同劇団の鈴木康弘さん(門司区在住)。方言も取り入れた、味わい深い民話の語りを楽しんで!

参考文献「北九州むかしばなし」

このシリーズを始めるにあたって参考にしたのは、北九州市が発行する民話と伝説マップ「北九州むかしばなし」。 北九州市内の地域に伝わる民話42話を、ゆかりの場所の地図と合わせて紹介しています。A4版変型、87P、頒布価格1000円。ブックセンタークエストなどで取り扱い。詳細の問い合わせは、(財)北九州市芸術文化振興財団(問093・662・3012)へ。