> > 北九州の民話 > 華姫・六郎太ものがたり(八幡西区)

華姫・六郎太ものがたり(八幡西区)

挿し絵/西原大路さん(にしはらたいじ/北九州市在住)
筆文字、イラスト作家。社名や店舗ロゴ、サイン、パッケージのイラストなど、北九州市内を中心に活動中。1月16日(日)まで、北九州市ウェルとばた2階・多目的ホール(戸畑区汐井町)で西原さんの展示会を開催中。

戦乱の火が全国に広がっていた戦国時代のことです。  企救郡(きくぐん)西谷の永野良義の城は、敵の激しい攻撃に遭い、落城寸前でした。逃げ惑う人々で大混乱の城内に、必死でいいなずけの名前を呼ぶ目の不自由な女性がいました。「桜丸さま、桜丸さま」。良義の娘、華姫です。姫は風邪がもとで高熱を出し、目が見えなくなっていたのです。姫がいくら名前を呼んでも、いち早く逃げ延びてしまった桜丸の声はありません。
姫の姿を見てかわいそうに思った家来の六郎太は、姫を城の外へ連れ出そうとしました。しかし、姫は「桜丸さまと一緒でないといやです」と言って動こうとしません。困り果てた六郎太は、「私が桜丸さまを探して参ります」と言うと、すぐに物陰に隠れて自分の喉を切りました。

そうして、声を変えて桜丸のまねをして、「姫、こちらじゃ」と、姫の手を取り、ようやく姫と2人、城の外へと逃げていきました。  やがて2人は、香月音滝山(いんたきさん)の白縫の滝の近くでひっそりと生活を始めました。そこには、目の病気に御利益があると伝えられる「白縫の観音」があり、六郎太が慣れない畑仕事の傍ら、姫の目に光が戻るように願をかけていました。 そんなある日、ついに追手に発見されてしまいました。六郎太は姫を守るため姫を逃がして1人で戦いましたが、敵の数が多く殺されてしまいました。姫も逃げる途中過って、谷底へ落ちてしまいました。  少しばかり時が過ぎ、どうにか命だけは助かり気がついた姫は、不思議にも目が見えるようになっていました。姫は必死で桜丸を探し回りました。しかし、姫の目に映ったのは、桜丸ではなく、死んでいた六郎太の姿だったのです。
その後、姫は尼(あま)さんになって生涯、六郎太の冥福を祈り続けました。六郎太が耕した畑はそのまま残り、いつの頃からか、この里を「畑」と呼び、白縫の観音も「畑の観音」と呼ばれるようになったということです。

「北九州の民話」読み語り

再生ボタンを押すと再生が始まります。
ファイルサイズ:7.44MB


語り手
りゅう雅登さん

語り手は、小倉南区に拠点をもつ「劇団 響座『朗読家集団 読房(どくぼう)』」のメンバー。朗読や語り物、音楽性をもった演劇の実験公演を行ったり、劇団の1階倉庫を改造して囲炉裏部屋を作り、民話の一人語りや群読、狂言風笑劇などを、地域の人たちに無料で楽しんでもらったりといった、地域密着の活動をしています。
今回の語り手は、同劇団代表・りゅう雅登さん。岩手県の「遠野物語研究会」会員でもあります。方言も取り入れた、味わい深い民話の語りを楽しんで!

参考文献「北九州むかしばなし」

このシリーズを始めるにあたって参考にしたのは、北九州市が発行する民話と伝説マップ「北九州むかしばなし」。 北九州市内の地域に伝わる民話42話を、ゆかりの場所の地図と合わせて紹介しています。A4版変型、87P、頒布価格1000円。ブックセンタークエストなどで取り扱い。詳細の問い合わせは、(財)北九州市芸術文化振興財団(問093・662・3012)へ。