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ながいきほら貝(若松区)

挿し絵/emoさん(小倉北区在住)
1984年生まれ。ペインター・切り絵ニスタ。ドローイングを中心にオーダーや壁画、インスタレーション、ライブペイント、個展を行うほか、「数寄者Design」(小倉北区魚町)で切り絵ニスタとして所属するなど、北九州市を中心に活動中。2009年「Art sparkling in FUKUOKA」受賞。2010年「GRAN DA ZUR 第1回“夢のケーキ祭り”」最優秀デザイン賞受賞。

昔、若松の庄の浦から、芦屋の浜の若者が船で津軽地方へ商売に出かけました。船は嵐にあい、若者はある岸へ打ち上げられました。  しかし、見知らぬ土地のため道に迷い、川の上流に向かって歩いて行くと、そこには若く美しい1人の女が住んでいました。
「私は九州筑前の者です。道に迷いました。決して怪しい者ではありません。どうか一夜の宿を貸してはいただけませぬか」。それを聞いた女はびっくりして、「あら、懐かしい、筑前の人とは…」と、涙ぐむのです。不思議に思って訳を聞くと、「実は私も筑前の国、芦屋の浜で生まれた者です」。 「えっ、芦屋…私も芦屋です。しかし、年の格好といい、あなたは私と同じ年頃…あの狭い芦屋で生まれ育てば私が知らないはずはない。うそ偽りでは…」。「あなたのおっしゃるのはごもっとも。私は芦屋で育ち、二十五歳の時、庄の浦の漁師の家に嫁に行き、海女をしていました。ところが働き疲れ、病にかかってしまいました。もういつ死ぬかという時、私の息子が海辺で一つのほら貝を拾って来まして、その肉を煮て私に食べさせてくれました。すると、またたくまに私の病は治り、元通りの元気な体になったのでございます。ところが不思議なことに、私はそれからというもの一向に年をとらず、ごらんの通りでございます」

若者は、それがもう六百年もの昔のことだと聞き、驚いてしまいました。「村でも私が年をとらないので、化け物だといわれ、何度海に身を沈めようと思ったかしれません。とうとう村にいることもできず、諸国のお宮やお寺にお参りしながらこの土地までやって来たのです」
若者が信じられないという顔をするので、「もしうそだとお思いでしたら筑前の国にお帰りになられた時、庄の浦をお尋ねになり、船留めの松の側のほこらを見てください。そのほら貝の殻を納めて、松の木に日付を印しておきましたから…」  若者は、筑前に帰るとさっそく、庄の浦を尋ねましたが、その女性の話はすべて間違いありませんでした。  このほら貝は、若松区の貴船神社の宝物となり、“不老長寿のほら貝祭り”が毎年、四月十五日に行われています。

「北九州の民話」読み語り

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語り手
りゅう雅登さん

語り手は、小倉南区に拠点をもつ「劇団 響座『朗読家集団 読房(どくぼう)』」のメンバー。朗読や語り物、音楽性をもった演劇の実験公演を行ったり、劇団の1階倉庫を改造して囲炉裏部屋を作り、民話の一人語りや群読、狂言風笑劇などを、地域の人たちに無料で楽しんでもらったりといった、地域密着の活動をしています。
今回の語り手は、同劇団代表・りゅう雅登さん。岩手県の「遠野物語研究会」会員でもあります。方言も取り入れた、味わい深い民話の語りを楽しんで!

参考文献「北九州むかしばなし」

このシリーズを始めるにあたって参考にしたのは、北九州市が発行する民話と伝説マップ「北九州むかしばなし」。 北九州市内の地域に伝わる民話42話を、ゆかりの場所の地図と合わせて紹介しています。A4版変型、87P、頒布価格1000円。ブックセンタークエストなどで取り扱い。詳細の問い合わせは、(財)北九州市芸術文化振興財団(問093・662・3012)へ。