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笑いで深刻仮面が剥がれる

天地無用、など、誤りやすいことばが新聞に発表されていた。私も引っ越しの箱に貼ってある「天地無用」のシールを「上下気にしないで良い」と長いこと解釈していた。気にしないといけなかったのだ。ことばについては解釈違いもあるが、言い間違いもある。

ばったり魚町であった学生。私のキチンとした服装を見て、「“変装”してどうしたんですか」と言った。それを言うなら「正装」だろう、とムッときた。けれど近頃はいい歳のとり方をしたいのですぐにカッとしないで、これはユーモアだと喜ぶように修行している。

先日、授業後の学生の感想に「“寝耳に水”のような話でした」とあった。名人芸の授業だからよっぽどびっくりしたとは思うけれど、ここは「目からうろこが落ちました」と書いてほしかった。しかし確かに授業中に寝ている学生を見ると寝耳に水をさしたくなる。眠くなる授業ではなかったと伝えたかったのだろうと思うと、つい笑みがこぼれて幸せになった。コメントを書いた彼女に感謝である。

前を歩く小学生の会話「“ぜんにん”の校長先生の代わりと言っていたから“あくにん”かなぁ」。思わず吹き出したくなる会話である。君たち(ユー)もっと(モア)笑わして、が(ユーモア)である。

しかし、現実社会はそう簡単ではないようだ。学生の質問「コンビニでアルバイトをしているのですが、ちょっとしたことでブチギレする人は何であんなにキレるのでしょうか」。不安と怒りの充満する現代。益々ユーモア力は必要だ。ユーモアは深刻ぶった仮面をはがし、空気を変える優れた道具だとされる。ピッタリの学生の報告。

「ある時、私の住んでいる地域で空き巣が出るなどぶっそうなことが続いてあった。そんな時、怪文書がばらまかれた。その内容は“○○地区には仮面夫婦がいる”だった。私は気味が悪かったので見て見ぬふりをしていたがその日の我が家の食卓で母が小声でしかも真面目な顔で『なんか近所に“おめん夫婦”がいるらしいね』と言った。家族は大爆笑。『仮面やろ』と突っ込んだが、その笑いのおかげでこの怪文書が本当にたいした問題ではないように感じた」。

ほらね。空気が変わった。

中島俊介さんプロフィール

 北九州市立大学名誉教授
 臨床心理士・エッセイスト