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ストロークをゲット

勝ち負けの極意は「打って反省、打たれて感謝」と剣道では教える。サッカーの敗因を語る本田選手のインタビューが印象的。「自分たちの良さを出すことよりも、相手の良さを消そうとする意識が強かった」。

同じようなことをゴルフのタイガーウッズも言っている。「ライバルがパッティングする瞬間に“入らなければいい”と祈ると、次に自分の番になったとき、自分のパットが入らなくなってしまう。“相手のパットが入ればいい”と祈ると、自分はもっとすごいパッティングをするのだと集中力が高まり…自分が勝つチャンスが増える」(林成之「名リーダーは脳で勝つ」第三文明社)。

ことばの力は大きい。ライバルに対する「負けろ」「入るな」というネガティブなことばで自分の脳が満杯となり、心に悪い影響を与える。このことを昔の人は「人を呪わば、穴二つ」といったのだろう。ライバルの幸せを祈れば自分も幸せになる。

心理学(交流分析)では「ストローク理論」で説明される。学生に「いい授業でした」と声をかけられると元気になる。このような元気の受け渡しや存在の認知を「ストローク」と呼ぶ。こころの栄養、ミルクである。ウインクしたり、手を振ったり。会釈などの「仕草」(非言語)の他に「お若いですね」「少しやせました?」などの「言語的ストローク」がある。マイナスのストロークもある。無視されたり「あっちへ行け」などのネガティブなことばや態度である。

ストロークはお金と同じで貯蓄できる。周囲からストロークをたくさん受け、75%以上ストックのある人は生き生きしている。25%以下になるとうつ状態になるとされる。貯めるコツは、まずは周囲にポジティブなストロークを与えることである。人だけでなく物にも与えられる。私は学生の食事代を払う時のお札には「お友達を連れて帰ってきてね」と言って送り出す。植木にも声をかける。周りにストロークを与えるとドンドン増えて戻ってくる。

この間、自転車を盗まれたと文句を言っている女子学生がいたので「“盗んだ人を幸せにしたら戻ってね”と祈れば自転車は戻ってくるよ」と言ったら「やってみます!」とスッキリした笑顔が返ってきた。

中島俊介さんプロフィール

 北九州市立大学名誉教授
 臨床心理士・エッセイスト