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夫の美

先日、門司港駅近くの出光美術館にいった。「書の美」展。心洗われた。水戸黄門さまの書は「風」。品格がある。その横には家康の書。感動したのは本阿弥光悦の作品だった。文章の最後の文字「雲」があるべきなのにそこにない。「おかしいな」と全体をみると何と、右上にある雲の絵の上に小さくポツンと「雲」の一文字が置かれてあった。まさに“魅せる”書! 見ている私の心まで躍動した。6月1日(日)まで開催である。

書といえば、私の研究室には書をたしなむ先輩や友人に書いてもらったものがたくさんある。机の右手には「闊達」。若い頃からの憧れの生き方だ。窓際には「凶弾に倒れるか、教壇で倒れるか、それが大学教師の本懐である」とある。学生に自慢すると、「先生は“冗談”に倒れると思います」と言われたので、「それは違う。私は“凶弾・教壇・今日ダンディー”に生き方を進化させたい。今日ダンディーで倒れるんだ」と言い返した。

書には心を動かす力がある。ある書家は「百回言うより、1回書いて貼る方が潜在意識に届く」という。そういえば学生時代、選挙事務所でもらった模造紙いっぱいに描かれた「突撃」を壁に貼っていた。今の妻と出会った頃だ。いまだになぜ結婚したのかわからなくなるのは潜在意識の書の力だったのかもしれない。

助けられた思い出もある。私が35歳の時に父が脳梗塞で倒れた。大阪の仕事を辞めて介護のために九州に戻るか、父を大阪に呼ぶかで迷っていた。友人もなく、文化の違う大阪に来たくはないだろう。悩んでいたある日。職員室の日めくりのカレンダーのキッパリとした書に目がとまった。「決断のない所に解決はない」。ハッとした。この書に後押しされて九州に戻れた。

「書の美」には心を動かし福を運ぶ不思議なパワーがある。美と言えば、先日、お金の円のマークは「¥」。その下に「夫」と書くと「美」の字になることに気付いた。嬉しくなって妻に「お金がいつもある夫は美しいよね」と言うと、「あたりまえじゃないの」と一言。

中島俊介さんプロフィール

北九州市立大学地域創生学群 基盤教育センター教授 佐賀県生まれ。会社員、小学校教員などを経て、現職。学術博士・臨床心理士。著書に「技ありの人間関係」西日本リビング社)あり