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ヘビーな話

甘いスイカの見分け方。色の濃いものなどいろいろあるが、一番はっきり出るのは叩かれた時の音である。甘いのは低い音とされる。叩き比べればわかる。人間もそうらしい。

オリンピックが終わった。大きなできごとというのは叩かれるのと同じ。大きな試練である。本物とそうでないものとが見分けられてしまう。スケートの浅田真央さん。メダルにこだわる私たちに大切なことを教えてくれた。二つの演技の一つがうまくいかなかった。メダルどころか入賞も絶望的だった。ところが残されたフリーの演技で自己ベスト。演技終了後に見せた涙は大きな感動を呼んだ。

彼女の演技中の15分間に15万件のツイッターが「感動」の2文字をつぶやいた。金メダリストの羽生君の約4万件を上回った。中国版ツイッター「微博」でも多くの賞賛があったとされる。

「人の息を止めさせるほどの素晴らしい演技。金メダルは獲得できなかったが、すべての人の尊敬を得た」「失敗しても立ち上がったあなたは氷上の女王だ」「浅田真央の演技で涙が止まらなかった。努力をする人は永遠に美しい」(産経ニュース、2月21日)。この「国境を超え、人をつなぐ感動」の正体は何だろう。彼女が全身から発した「諦めるなの叫びと希望の匂い」ではないだろうか。

先日大阪の堺に行った。40年ぶりに人生の恩人に会うためだ。当時24歳と28歳。少々お互いに老けたが、同じ声、同じ誠実さだった。駅で懐かしさのあまり思わず抱き合った。当時の記憶がよみがえる。未熟な自分が情けなく、慣れない土地と営業の仕事に心がつぶれそうだった。町工場で黙々と汗するその人は言った。「中島君、顔に絶望と書いてあるよ。“希望の匂い”のする男になれよ」。流行っていた歌の一節である。

「絶望とは自分に諦める許可を与える感情」と後年心理学で学んだ。諦めに立ち向かう希望への勇気を持てば絶望は退散すると教えられたのだ。

恩人と別れた後、大阪でさらにパワーをもらった。大阪の寄席で落語家に毒ヘビの見分け方を聞いたのだ。ヘビと出合ったら逃げずにゆっくりとたち向かっていく。その時、横に「どいた」ヘビが「どく」ヘビであると…。絶望と言う名の毒ヘビも真央ちゃんのようにひるまず立ち向かえば横に「どく」のだ。絶望恐るるに足らず。

中島俊介さんプロフィール

北九州市立大学地域創生学群 基盤教育センター教授 佐賀県生まれ。会社員、小学校教員などを経て、現職。学術博士・臨床心理士。著書に「技ありの人間関係」西日本リビング社)あり