> > 技ありの人間関係 > 新しく船出する君に
 
 
 
 
「あの鐘を鳴らすのはあなた」。この曲を改めて聴いて心揺さぶられた。さすが名作詞家・阿久悠の作品である。あなたに逢えて良かった理由は、「希望のにおい」がするからという。希望のにおいってどんな香りだろうと思った。
ナチスドイツのアウシュビッツ収容所で最後まで生き延びた人は、誰かが自分を待っていてくれるという希望を持ち続けた人たちであったという。人は心の中に希望のある限り、困難な状況に負けないで生き抜くことができるのだろう。
つながり合うことの大切さを実践する、ある優れた教師は「心に人を住まわせる」と表現した。自分の目の前の人とつながり合うとは、その人に頼み込んで自分の心の中に住んでもらうことだと言う。希望を失いそうになった時は、希望にあふれた人に心に住んでもらえればいい。
一枚の古ぼけて変色したボロボロの写真を持ち歩いている。裏には「竜さんと。昭和47年」と書いてある。大学卒業間際、社会人になるのが怖くて仕方なかった。「電話をきちんと取れるだろうか」「会社の人とうまくやれるだろうか」。気の小さい私は不安でいっぱいだった。
意を決して四国、高知の桂浜に行った。手元の写真には、坂本竜馬の銅像の前で私が精いっぱい強がって写っている。足元には京都で買った番傘を入れたナップサック。
 多分あの時、私はこの維新の英雄に自分の心の中に住んでもらわないと怖くて社会に出られなかったのだろう。竜馬に希望のにおいをかいだのだと思う。その後40年近く希望を見失いそうな時、この写真が支えてくれた。希望には勇気が含まれている。

世の中には同じような人がいるものである。その前年の1月、私は北九州市役所前にいた。駅伝のゴール会場でアルバイトをしていたのだ。
 時間が空いたので、小倉市民会館での「成人式の集い」をのぞいた。聞いたことのないグループ「海援隊」の演奏だった。歌い手は武田鉄矢と名乗っていた。これから東京に出て行くという高揚感と希望にあふれていた。彼らは「坂本竜馬」に自分の心の中に住んでもらい、グループ名も「海援隊」としなければ、わずかな成功の可能性にもかかわらずに、上京して挑戦するという行動は怖くてとてもできなかったと思われるのである。

もうすぐ春らんまん。新しい希望の船出をする人たちも多い。あなたはどんな人を心に取り入れてますか。