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しつこい質問

「きいていいですか」という。「聞く」には「質問する」という意味がある。だから「はなし上手は聞き上手」の言葉を借りれば「聞き上手は“質問上手”」といえる。コミュニケーションの秘訣は質問力。人とつながるための有力な技術が「質問する力」なのである。

よい質問は具体的で本質的な質問。その人の生き方の根っこが現れる具体的な質問だという。「あなたにとって愛とはなんですか?」は本質的ではあるが具体的ではなく応えにくい。また俳優さんは「好きな食べ物」を聞かれるより「眼の演技での失敗談」を聞かれる方が仕事の本質に触れられて嬉しい。具体的で本質的な質問のトレーニングは難しい。

先日、学生に問うた「あなたがもっとも自信をもって使える道具を一つ教えて下さい」。使う道具はその人の人生の本質に迫る具体物なのでよい質問である。水泳を長くやっている学生は「ビート板」といった。ユニークだと思ったのは「箸」と応えた学生である。

トレーニングだから、それに対してさらに他の学生が質問しなければならない。私の期待した質問は「箸にまつわる一番嬉しい思い出は?」。しかし学生は思うように動かない。

1人目「今までで一番つかみ易いものは何ですか?」、2人目「今までで一番つかみ難いものは何ですか?」、3人目「これから何をつかみたいですか?」。3つの中から本人がベストな質問を選びそれに答える。

彼が選んだのは3番目。これから箸でつかみたいものは何か。彼の答えを待って教室はシーンとなった。沈黙の後の答え「未来!」。教室は「オー!」とどよめいた。でも箸でつかめる未来って小さいかもと心配になった。

人生最後の質問はご存じだろうか。2万人の臨死体験者を研究してきたキューブラー・ロスの報告では、死後わたしたちが出会う光の生命体は「どれほど人を愛したか?」と質問すると言う。光が望んだのは、人を決して差別しない類の愛。自分の知っている人を、その人の欠点をも含めて、かつその人を愛せるかというのが彼が尋ねたいことだという。

生きている間に家族にたくさんの質問をしたいものである。子どもには「いじめられてないか?」、パートナーには「お金はあるか?」。私は心配性だから、妻によく「幸せか?」と聞く。この間も尋ねると言われた。

「幸せっていいよろうがねー。せからしかね」

中島俊介さんプロフィール

 北九州市立大学名誉教授
 臨床心理士・エッセイスト