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吾輩たちはネコである

口は「命の入り口、心の出口」と言われる。ゴミを拾って見せに来る子どもに「えらいね」とほめていた教師。子どもがゴミ箱から拾っていたことに気づきショックを受けた。

志の高い教師だったので、子どもの行動をとやかく言う前に反省した。自分の口にしてた「えらいね」はことばのゴミ箱から拾ってきたゴミのような言葉だったのだ。目には目を、ゴミにはゴミを、で子どもにやられたのだ。

「君のおかげで、みんなが気持ち良くお勉強できるようになったよ。ありがとう。先生も嬉しいよ」と感謝と喜びの心で言ってみた。言われた子どもの顔がパッと輝いた。ほめられなくてもみんなのために動くようになった。

幸せは「心より出でて我を飾る」と聞いた。「おはよう!」「こんにちは」、キャンパスですれちがう学生にこちらから声をかけるように決めた。元気よく始めたけれど、学生の反応がないことが続くと気持ちがなえる。

この間なんか、こちらが「おはよう」というと「ございます」と返された。「二人で一つかよ!」と突っ込みたくなる。その内にだんだんと「君から先に言うべきだ」と相手を責める気持ちさえ芽生えてくる。そんな時に冒頭の先生の話を聞いたのだ。口からゴミをだす、形だけのゴミあいさつになっていたと気づいた。

そしてついにその日が来た。見失いそうな初心とゴミ心を一変する画期的な方法を思いついたのだ。大学のキャンパスにはどういうわけかネコがたくさんいる。そこで、出会ったネコに「おはよう!」と声をかけてみた。ついでに立っている木にも「こんにちは」と言ってみた。

すると不思議な事が起きた。向こうから来た学生に、本当にきらくに素直に「おはよう!」と声をかけることができたのだ。ネコや木で鍛えているから、相手の反応はなくても平気である。落ち込むこともない。

このやり方は素晴らしい、ぜひ学生にも教えねばと「まず学内のネコや木に心からあいさつをしなさい。無視されてもめげないようになる」と授業で話した。すると学生が言ってきた。「ありがとうございます。先生方にあいさつできるようになりました」

ええ! 反応がなかったのはこっちの方だったのかい。

中島俊介さんプロフィール

 北九州市立大学名誉教授
 臨床心理士・エッセイスト