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「やっぱり“うん”は巡るんだ!」

この世ではない世界で、親父は帽子をかぶっていた。「かぶり心地はいい?」と聞くと、ニコニコしながらうなずいた。

3か月前の朝に不思議な体験をした。駅の下りエスカレーターに乗ってホームに降りていた。下からの突風で帽子を飛ばされた。アッと思い後ろを振り返ると、帽子が見当たらない。それから20分ほど駅構内をウロウロ探し回ったけれどどこにもない。飛ばされて停車中の電車に転がり込んだのかもしれない。駅員さんに調べてもらうように頼んだ。

翌日、「ありませんでした」と駅から連絡。キツネにつままれた。神隠し。そんなことばがピッタリだった。どう考えればいいのか分からない。金環日食のような説明はできないのだろうか。

そう言えば、頭から帽子が飛ばされたときの「フッ」という感覚は、風で飛んだのではない。何か見えないものの手で取りさられた時の感じだった。

「あんまり素敵な帽子だったので亡くなった父親が取ったのだ。喜んでもらえたのならいいや」と考えると気がすんだ。考え方次第で心も軽くなる時がある。

お気に入りのコーヒーカップを割った妻。帰宅した夫に言うと。「ごめん。それは僕のせいかも。今日さがしていた書類がヒョッコリ見つかったからだ。良いと悪いは順ぐりだ」。妻の顔が晴れたという。確かに人生の幸・不幸はプラスとマイナスの循環である。「幸」の漢字は「¥円」の上に「プラス+」と「マイナス-」が乗っている。

…ここまでコラムを書いて、今回は良くできた話だと妻に自慢すると。「フン! 私はこんなこと夫に言われるといやだね。だって自分の運は自分の中で巡るんだから、夫婦で循環すると言うのは納得いかない」。

それを聞いた私はムッとして「しかしそれが夫婦と言うものやろ」と言い返すと。急に「私は夫婦とは思っていない、私は“派遣”やから」と言った。「ええ! どこから派遣されてんのや」と言うと、妻は天を仰いだ。派遣だったら契約が切れるかもしれないと急に不安になった。

…あ!そうだ。運は巡るという話だった。その証拠となる学生の話。イヌの散歩に出かけた。フンを入れた紙袋を手にして歩いていた。後ろから不意に現れたオートバイの2人組にその袋を持って行かれた。

中島俊介さんプロフィール

 北九州市立大学名誉教授
 臨床心理士・エッセイスト