> > 技ありの人間関係 リターンズ > それって目先やん、せまっ!

「それって目先やん、せまっ!」

「いいことするなー」と感心した。長崎の高校生が「核兵器廃絶の1万人署名」のためにキャラバンを企画。長崎を出発して、最終日の7日には原爆投下予定地だった小倉勝山公園で署名活動をした。今の時代、善いことをするにも勇気がいる。

運を良くするには「頼まれてもいない、善いことをする」と教えてくれたのは鹿屋体育大学の田口信教教授である。平泳ぎでミュンヘンオリンピック金メダリスト。講演を聞いた。

田口さんは金メダルを取るには練習だけではだめだ、運が必要だと気がついた。運を良くするには心がけが大事だと一日一善。電車で高齢者に席をゆずる。車に鍬(くわ)を積み、はねられた犬猫をみたら車を停めて墓を掘って弔う。合宿先でも自分で洗濯をする。とにかく善いことをしようと心がけた。そうしていると周囲の誰からも「田口さんみたいな人に金メダルを取ってもらいたいねー」と良い機運が盛り上がってくるというのである。

単純すぎてウソみたいに思えるけれど、これを理由づけて説明したのが京都大学の藤井聡教授である。「認知的焦点化理論」と呼んだ。こころの奥深い所でその人が何に焦点を当てているかで運が決まるというのである。人に配慮できる人。「配慮範囲」の広い人ほど運がよい。

縦軸と横軸でその面積の広さを考える。例えば縦軸に関係軸を取る。自分、家族、親戚、友人、知人、他人とだんだんに上に行くほど関係が拡がってゆく。横軸は時間軸で今日、二三日後、自分の将来、子どもの将来、社会の未来というように横に広がっていく。

縦軸と横軸であらわす面積のもっとも広い人。他人のことと社会の未来を考えて行動する利他的な人ほどツキに恵まれることになる。だから学生にはシュウカツ(就職活動)の前にヘイカツ(平和活動)やボラカツ(ボランティア活動)を十分にして運をつけてから動いた方が人生開けるよとアドバイスしている。

自分のことと目先の利益しか考えない配慮範囲の狭い人間は一見効率よく生きているようで運に恵まれない。だから私は今朝も足立山に北九州市だけでなく世界の平和もお願いした。するとその日職場の女性にお菓子をもらえた。すごく嬉しかった。え、これって目先のこと!

中島俊介さんプロフィール

 北九州市立大学名誉教授
 臨床心理士・エッセイスト