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「人生! 期待は禁物」

「あせるな。あわてるな。あてにするな」。親父の口癖だった。

なかでも、最後の“あてにするな”を大事にしていた。人を当てにするから、恨みたくなる。期待するから、文句が出る。とよく言っていた。

同じようなことを寅さん映画の監督、山田洋次も言っていた。若い女性アナウンサーとの対談。女性が「監督、不登校の子どもたちが一番好きな映画は寅さんらしいですよ」「嬉しいですね。でもそれはよくわかります。寅さんは誰にも期待していませんからね。“期待しない”とは大きな愛ですから」

えー! 期待している方が愛しているのではと思った私は急いで辞書を引いた。私の中辞典には。期待とは「将来良くなるであろうことを当てにすること」とあった。将来を当てにするとは「現在の否定」である。

期待されたとたん「今の私は否定された」と敏感に感じる子どもがいる。期待したとたん親の欲求水準ははねあがるのだ。子が親にして欲しいのは、まずは今の「あるがまま」を受け入れてもらうことである。あるがままに受け入れるというのは、相手の話に「聴きほれる」ということである。

例えば「不登校になり、『プロレスラーになる』というわが子をどうしても受け入れられない」と言う親の気持ちも確かによくわかる。けれどもやはり、一切の期待を捨てて「そうか。そうか」と演技でも良いから「聴き惚れている」と不思議なことが起こる。

夢を語り尽くすと気力を取り戻すのか、そのうちに現実的なことにも目がいくようになる。成長のいい循環が始まるのだ。結果として「大きな愛」で包むのと同じ効果がでるのである。だから「期待しないは大きな愛」なのだろう。キタイではなく「聴キタイ」のほうがいいということだ。期待は禁物である。

「いいえ、こちらこそ、アンケートにご協力いただき、ありがとうございました」

中島俊介さんプロフィール

 北九州市立大学名誉教授
 臨床心理士・エッセイスト