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「笑いとばされていたんだ」

「ホホ、ハハハ」笑いは心と体によいというので、「笑いヨガ」を体験してみた。笑いを体操として身体で覚えるトレーニングである。目からうろこだったのは、私達の脳は作り笑いも本当の笑いも区別がつかず、笑いの効果は同じということ。とにかく笑う。笑う。二日間笑って過ごす。いろんなトレーニング種目を体験した。

例えば「請求書笑い」、自分の作ったイメージで手のひらに乗せた架空の請求書をパッと開く。それを見たとたん笑いだすのである。次は「携帯笑い」透明の携帯電話を耳にあて「わははははは」と笑う。指導者に従って、つぎつぎといろんな笑いをやってみる。

一人ではアホらしくてできないだろうに20数名の人たちと一緒に笑うと、他人の笑い声に誘われて自然に無理なく笑えるようになる。笑いは伝染する。笑った後お腹が痛くなった。これがヨガと同じ健康効果だという。理由なく笑えるようになった。どんな時でもどんな場所でも、笑おうと思えば笑えるという妙な自信は心をしなやかに強くするのかもしれない。

試しにその晩、娘に「もう少し人生を考えたらどうだ。あははははは」と笑いながら小言を言うと「お父さん、いつもそんな風に言ってよ」と素直に私の言葉が耳に入ったようだ。これはいい。「小言笑い」と名付けた。

心理学では「悲しいから泣くのではない。泣くから悲しいのだ」という。「楽しいから笑うのではない。笑うから楽しいのだ」を実感する体験だった。

インドの医師、カタリア氏がムンバイの地で5人で創めたこの「笑いヨガ」。ストレス社会を生き抜く技の一つなのだろう。今では68カ国以上に広がっているという。先日の朝、日課のお風呂掃除を笑いながらやっていると、指をしたたか棚に打ちつけた。「あっ痛た!あはははは」と笑うと痛みが軽くなった。笑いは痛みや不快感をふき飛ばす。

ハッと気付いたことがあった。私の妻は昔から、ほんとうによく笑う。それもいわゆる「わっははははは」という高笑いである。そのたびに「馬鹿にしているようだからやめなさい」と言うけれど一向に変えない。

だいたいすべてにわたって私の深遠で有用な助言にも痛くもかゆくもない感じである。不思議だった。そうか妻に私の言葉がこたえなかったのはこの「豪傑笑い」のせいだったのだ。

中島俊介さんプロフィール

 北九州市立大学名誉教授
 臨床心理士・エッセイスト